「緑はよみがえる」タイトルに込められた怒りと皮肉

 

 

「一番難しいのは赦すことですが、人が人を赦せなければ人間とは何なのでしょうか」

 

 

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あらすじ

1917 年冬、イタリア・アルプス山中のアジアーゴ高原。冴え冴えと輝く月に、山が美しく照らされている。イタリア軍兵士の歌うナポリ民謡が、静まりかえった夜に響き渡り、姿をみせないオーストリア軍兵士からも、歌をせがむ声が聞こえてくる。塹壕に身をひそ め、寒さと死の恐怖におびえる兵士たちにとって唯一の楽しみは、家族、恋人から送られてくる手紙だけだ。着任したばかりの若い中尉は、 想像とは違う初めての戦争に戸惑いながら、母への手紙にこう綴る。「愛する母さん、一番難しいのは、人を赦すことですが、人が人を赦せなければ人間とは何なのでしょうか」。やがて一時の平和は破られ、オーストリア軍の激しい砲撃が開始される・・・。

 

 

77分という短い時間ながらも、登場人物たちの悲痛な状況が隅々まで描かれている。

特に半端ないのが脚本。言葉が持つパワーに終始圧巻された。

 

冒頭から始まるハーモニカのメロディー、兵士の口から飛び出す数々の言葉。

白黒映画ではないが、映像に映し出される色は見渡す限り白い雪と色落ちた洞窟。時たま見えるオレンジは、敵軍からの砲撃。そして黄金に輝くカラマツ。

 

それらの色合いが意味するのは、言うまでもなく兵士たちの閉ざされた極限状態だ。

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(個人的に タイトルは内容の次に重視しているんですが)

「緑はよみがえる」というタイトルが示すことは何か、最初は戦争を無理に美化した言葉だと思った。自然と人類の再生を意味するとも考えた。

 

しかし物語の終盤、兵士がカメラ目線で私達に話しかけてくるシーンがあるのだが、そこで一人の兵士はこう語る。

 

「やがて戦争は終わり、ここには緑がよみがえる。ここで起きたこと、耐え忍んだことは何も残らない。信じる者すらいなくなる」

 

 

「緑はよみがえる」とは、兵士たちの虚しい怒りだったのだ語り継ぐことのできない記憶を目一杯静かに中傷した。その時兵士は涙を堪えていた。

 

 

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他にも心打たれる数々の台詞、

「歌は銃弾より強いんだ」

 

「幸せでなければ歌えません」

 

「獣でも 血の臭いを嗅ぐと小便をするんだ 処理場へ行く前に 俺らも獣だということかね」

 

「死者の数よりも名前が知りたい」

 

 

 

そしてひとときの争いと訴えが終わった時、映画の締めくくりとしてある人の言葉が映し出される。

 

「戦争とは 休む事なく世界を歩き回る醜い獣である」

La guerra è una brutta bestia che gira il mondo e non si ferma mai

 

 

さらに、この映画が誰に捧げられたものか知った時、脚本が持つ力を再び痛感する。